エコレザー事例

吉比産業株式会社様竹内健 代表取締役会長 インタビュー

日本のエコレザー品質で世界に勝負

吉比産業株式会社
代表取締役会長 竹内健様
吉比産業は、明治15年創業の老舗革卸売り販売専門商社として、子・中牛革、成牛革、羊革、山羊革など多種多様な皮革を扱っている。その一方で、日本エコレザー基準認定の創設に深く関与し、日本におけるエコレザーのパイオニアでもある。同社の代表取締役会長である竹内氏は、今後の貿易交渉の進展を見据え、エコレザーが日本のブランドになるためには、急増する海外製品との差別化戦略が大切だと語ってくれた。


2012年(平成24年)に
創業130周年を迎える吉比産業様。
エコレザーとは、日本皮革技術協会が日本エコレザー基準認定(JES)を選定する時からかかわってきました。本当に多くの方々の協力を得て基準を設定することができたと思っています。(厳しい認定基準との声も一部にはありますが)不可能な数字ではないと個人的には考えています。

実は中国や韓国も、日本の基準と大きくは変わらない、同じような基準数値を持っています。しかし、運用面で結構ルーズにやっているので、品質面で十分ではありません。日本ではそうならないことが大事です。それよりも、現在の基準よりも厳しくしたほうがいいのではないかという思いもあります。

世の中はエコブームの真っただ中ですが、エコレザーに関しては十分に浸透しているとは思えません。関西の人はよく言えば合理的ですから、世間が「エコレザーがすごくいいよ」という波がなければ、金額の安いほうを選ぶ傾向にあります。逆を言えば、エコレザーが普及し、安心・安全という特徴が浸透すれば、多少値段が高くても爆発的に売れる可能性はあります。

私たちは、古くからエコレザーを取り扱っているので「高付加価値商品」としてエコレザー扱っていければと思っています。そのためにも、日本のエコレザーの品質を向上させる必要はあると考えます。

日本の「安心・安全品質」で海外製品に対抗7つの色

今後は、日中韓のFTA(自由貿易協定)問題がどのように進展するかによっても変わってきますが、安い革が大量に輸入されることが考えられます。そうした中でも、良質の日本革製品を守らなければなりません。国民の安全・安心を守るエコレザーであれば、海外からどんな安い革が入ってきても十分に対抗できるはずです。

中国は、コールドチェーン(生産・輸送・消費の過程の間で途切れることなく低温に保つ物流方式)の確立などの問題を抱えていますので、日本に中国製の安い革が大量に入ってくるのはまだ先です。その間に、日本の革製品の品質の向上を進めていく必要があるでしょう。中国製ソファーがヨーロッパに輸出され、革に施してある「防かび剤」でかぶれるという健康被害が原因で、輸入規制がかかったことがありました。家具とか皮膚に触れるような製品には「安心・安全品質」が求められつつあるケースだと思います。

日本国内でも、安心・安全を求める消費行動が大きなトレンドになっています。その上、輸入品だから「デザイン的に優れた製品だ」という時代風潮でもありません。こうした状況は、エコレザーにとってとても良いことです。体にやさしく、デザイン性に優れた革製品として、エコレザーを打ち出していければと思います。

エコレザーで開拓する新しいマーケット

会長のお部屋にある木製の「KIBI」。
インテリアからも自然を大切にする
想いを感じられます。
エコレザー製品を購入いただけるお客様は健康志向を持たれている消費者だと思っています。そういう方はデパートで買い物をする傾向にあるようですので、主にデパートを中心とした販路開拓を考えています。スーパーマーケットという販路も考えられますが、この業態はどうしても「安さ」が売りになりますので、エコレザーの高付加価値を打ち出すのは少し難しくなると思います。

また、消防庁の依頼で、消防士の手袋とウェストポーチをエコレザーで作ることになっています。消防庁のような具体的で分かりやすいユーザーに使って頂いて、そこからエコレザーをアピールするような方法もPRとしては有効だと考えています。

いずれにしても、いろんなニーズを掘り起こすことが大事だと思いますので、機会がある度にエコレザーを押し出すようにしています。今のところ、一番多い用途はハンドバッグや靴ですが、これからは家具の需要も大きいと考えています。また、安心・安全の場である医療分野も考えられるでしょう。今ではブランドとなっている「石垣牛」の革などの提案など、地域と結びついた提案もいいかもしれませんね。

今は、需要はどこにあるからわからない状況ですから、いろいろやってみるべきだと思います。
消費者ニーズは必ず、あります。