Q&A

有限会社ヴァード代表取締役・野田耕兵様 インタビュー

レザーウェア業界を変える!日本でただひとつの"松坂牛・胃袋エコレザー"

有限会社ヴァ―ドは、岐阜県各務原市にある。名勝天然記念物に指定された桜並木で有名な愛知県・木曽川堤のすぐ近く。のどかな風景が広がるこの地域だからこそ、真っ黒でシンプルな社屋がよく目立つ。
皮革製品の製造販売を行う同社で開発した日本エコレザー(以下「エコレザー」)は、松坂牛の胃袋。
学生時代から大切にしているという名盤のレコードを聞きながら、同社の代表取締役・野田耕兵氏に話を聞いた。
牛の胃袋で革を作るのは、簡単なことではない。材料の入手に手間がかかるのはもちろん、苦労して手に入れても滑らかな革になるように加工するのにも手間がかかるし、苦労して出来上がった革も小さくて1枚では使いづらい。手間がかかるから、もちろんコストもかかる。それゆえに、牛の胃袋の革を扱う会社は他にはない。それが、高級な松坂牛のエコレザーとなればなおさらだ。
こうした事情をすべて理解した上で、同社は松坂牛の胃袋の革づくりに挑んでいる。野田氏にその理由を尋ねると「だって面白いから。だから挑戦しました」と笑顔が返ってきた。

「胃袋の革づくりに興味を持ったきっかけは、知り合いの焼き肉屋の店主でした。『胃袋は美味しい。でも、食べたらなくなってしまう。それはもったいない!』と言って胃袋を革に加工できないかと試行錯誤していた彼を見て、自分もやってみようと思ったのがきっかけです。
それをエコレザーでやってみようと思ったのは、日本皮革技術協会の方にエコレザーを使うことの大切さを教えていただいたおかげです」(野田氏)
胃袋の凹凸が特徴の松坂牛のエコレザー
こうして始まり、出来上がったエコレザーが、「猩々緋(しょうじょうひ)」「杜若(かきつばた)」「江戸紫(えどむらさき)」と日本の伝統色の名前がついた3枚。独特の模様と力強い色合いで、カジュアルな洋服にもぴったりだ。
エコレザーが洋服に使われる例は、まだ少ない。直接肌に触れることも多い衣料だからこそ、人にやさしく安全なエコレザーによる製品の開発が期待される。

立体的なドクロづくりが、正倉院国宝復元のヒントに。
次世代にも伝えたい革の面白さ

同社の洋服でひときわ目を引くのが、立体的なドクロ型が印象的なジャケットだ。刺繍やプリントによるものは見たことがあるが、立体的な、しかも革でできたドクロが施されたものは他では見られない。
この独特なデザインに挑むきっかけもやはり「面白いから」だったと、野田氏は言う。
立体的なドクロは、小物が入るポケットになっています
「立体的なドクロの型押しを施すのは、簡単なことではありませんでした。これは、タンニンレザーに水をかけながら、木型を押し付けて形を作っていったものです。革が木型に合わせて縮んでいく原理を生かして作りました。
ただ、革の縮む強さはとても強力なので、失敗すると木型が革からはずれなくなってしまいます。そこでまずは、革が縮んだ後でも外すことができる木型の開発を行う必要がありました。福井県の職人さんを訪ねて何度も試行錯誤を重ねて作ったのが、現在の木型です」(野田氏)

ひとつのことにここまで全力で取り組むことができるのは、野田氏に強い探究心があるからだ。しかもこのドクロの木型開発が、同社で正倉院の国宝である漆皮箱の復元に挑戦した際のヒントにもなったというから面白い。
(左)代表取締役・野田耕兵氏、(右)松坂牛の胃袋レザーで作ったジャケット
「奈良の正倉院には、皮革で作られたたくさんの工芸品が収蔵されています。当社では、その中の1つである漆皮箱の復元を依頼されました。その時に役に立ったのが、ドクロの木型を作成した経験です。漆皮箱用の木型を作って、ドクロと同じように革に木型を押し付けていくことで、ひび割れのない、綺麗な箱を作ることができました。8世紀のものを復元する方法と立体的なドクロを作る方法が同じって、面白いと思いませんか?
革の様子を眺めて出来栄えを確認する毎日は、決して楽なものではありません。でも、無事に木型が外れて思い通りのものができた時は、作業をしてきて本当に良かったと、心の底から思います。この喜びがあるからこそ、クリエイターはやめられません。この面白さを次世代にも伝えていきたいと思っています」(野田氏)

皮革製品の伝統を大切にしながら、新しい革を使った新しいデザインの洋服を次々と生み出す野田氏。その独創的な発想力と探究心で、レザーウェア業界を駆け抜ける。
「次は、純白と濃紺の松坂牛の胃袋レザーで、エコレザーの認定を目指します」と語る野田氏の表情は、少年のような笑顔で満ちていた。
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