Q&A

株式会社ニシノレザー 西野佳伸様 インタビュー

写真墨田区の工場の様子

お客様と挑戦し続ける、職人気質のピッグスキン・タンナー

東京都墨田区。スカイツリーのお膝元とも言えるこの地域は、皮革産業が盛んなことで有名だが、20年ほど前には70社ほどあった豚皮を取り扱う企業も、今では14社~15社ほどだという。ニシノレザーはその数少ない企業の一つだ。長い歴史の中で培われた経験から作られるニシノレザーのピッグスキンは、柔らかく品質にも優れ、靴のライニング(裏材)やビリヤードのキューなど、様々な用途で使われている。自ら現場に出て、日々挑戦し続ける西野社長に話を聞いた。
ニシノレザーは東京都東墨田に工場を構えている。関東周辺に養豚業者が多いこともあって、ピッグスキンを取り扱いはじめたそうだ。同社が初めてエコレザーの認定を取得したのは2012年。今では、6点のピッグスキンがエコレザー認定を取得している。

「もともとヌメ革を取り扱っていましたし、当社の品質を理解してくださるお客様が多いので、エコレザー認定を取得しようと改めて考えたことはありませんでした。でもある時、お客様から『エコレザー認定を取ってみてくれない?』と言われたことがあって。それがエコレザーを取り扱いはじめたきっかけです」と西野氏は言う。

展示会に出展する機会も多い同社だが、そうした場所でもエコレザーを取得した反響は大きい。「ピッグスキンのエコレザーを取り扱っている会社はほとんどありません。だからこそ、豚のエコレザー認定を取ったことは当社の強みの一つになっていると考えています」(西野氏)

写真 ベビーシューズのハンドメイドキット
素材も革もメイド・イン・ジャパンで安心・安全な同社のピッグスキンは、ベビーシューズとしての需要もあるそうだ。「靴の企画製造を行っているumeloihc(ウメロイーク)さんと共同で開発したベビーシューズのハンドメイドキットは、エコレザー認定を取得したからこそできた商品です」と語る西野氏の表情は明るい。

新しいチャレンジに積極的に取り組む同社のこうした姿勢と志が、お客様からの信頼や様々な製品開発の成功につながっているのだ。

純白のピッグスキンが物語る、確かな品質と価値

写真 乾燥用のドラム
ニシノレザーの代名詞とも呼べるのが、純白のピッグスキンである。
成人はもちろん、小さな子どもや肌の弱い人が直接触れても問題がないよう純白にも関わらずホルムアルデヒドの出ない革を開発した。

しかし、それを安定的に供給できるようになるまでには、様々な苦労があったという。「白い革を作る時にはホルムアルデヒド鞣しを施すこともありますが、私たちが目指したのはホルムアルデヒドがゼロの革でした。完成までの道のりは長いものでしたが、達成感もひとしおです」(西野氏)

開発はもちろんだが、純白の革を生産し続けるのは簡単なことではない。色が混ざらないように"純白専用の道具"を用意し、その専用道具を整備し続けるための手間もかかれば、純白専用の乾燥用ドラムを置く広い場所も必要になる。こうした理由で他の企業では生産が難しい革だからこそ、ニシノレザーとして純白の革を提供する価値は大きい。

純白の革は染めた時の発色が良いため、従来よりもカラフルで綺麗な仕上がりの革を作ることができるというメリットもある。技術開発の時間と生産し続けるための手間を惜しまない精神が、同社のパフォーマンスを高め、確かな品質と新しい価値を持った製品を生み出している。

挑戦を積み重ねることで生まれる新しい製品と、その価値

写真 代表取締役社長 西野佳伸様
開発中の"透明な革"を説明する様子
同社が新しいピッグスキンを開発する時、その横には常にお客様がいる。現在開発している"透明な革"もその一つだ。昔は馬の鞍を作る際に使用していた生皮を応用して作った革は反対側が透けるほど薄く、くるくると丸められるほど柔らかい。

「今は曇りガラスのような半透明ですが、ニスのようなものを塗って仕上げることで、さらに透明度を出すことができます。水も弾くので様々な使い方ができると考えています。グリセリンを用いたことで柔らかくなりましたし、生臭さもなくなりましたので、あと一息。『パスケースづくりなどに生かしたい』というお客様の希望で開発にチャレンジしたのが、この革です」(西野氏)

こうした西野氏のモノづくりに対する姿勢や革の品質を知って、遠方から訪ねてくるお客様も多い。中には、ビリヤードのキューの先に設置するタップの制作を依頼するために、広島から来た企業もあったという。豚のほんの一部分だけを使って作られるこの部品を同社が納品するようになってから約8年。今ではそのタップは世界一と言われるほどになったそうだ。

「やっぱり私たちは、お客様から求められるからこそ本当に良い革をお届けすることができるのだと思います。求められるからこそ、その難題をクリアするためのアイディアが生まれて、良いものが開発できる。その過程では失敗することもありますが、失敗から生まれるものも大きいです。そうしてチャレンジし続けていかないと、"モノづくり"はそこで止まってしまいますからね」と語る西野氏からは、皮革業界の将来を思う熱が感じられた。

これは毎日長靴をはいて現場に立って挑戦し続ける西野氏だから、たどり着くことができた答えなのかもしれない。タンナーだけが取り組む、メーカーだけが取り組むのではなく、メーカーとタンナーが手を組んでチャレンジし続けることによって、価値を見出すことができるのだ。

エコレザーはもちろん、お客様に求められる確かな品質の商品を提供し続けるために、ニシノレザーはこれからも挑戦を続ける。

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