エコレザー事例

堀内貿易株式会社代表取締役 竹原洋一様 インタビュー

環境に優しく、人間にも優しいのがエコレザーの精神

代表取締役 竹原洋一様 ワニ革は数ある製品の中でもトップランクに位置する希少性を併せ持った高級皮革だ。堀内貿易は、そのワニ皮をビジネスの中心に置き、国内外から圧倒的な信頼感と支持を集めている。革の提供に止まることなく、付加価値を付けることで製品が持つ世界観を広げていきたいとする同社の取り組みを聞いた。


当社は一貫して爬虫類を扱ってまいりました。皮の種類にはワニ、トカゲ、ヘビなどがありますが、売り上げの9割以上がワニ革の取り扱いになります。基本的に、「原皮」や中間製品である「ウェットブルー」や「クラスト」といわれるものを輸入して、協力工場で加工をしていただいています。

ワニ革は革の中でも非常に高級な素材です。その価値を損ねない品質を重視しつつ、お客様(最終消費者)に大切に使っていただける製品の提供をモットーとしています。

ワニ革は、ハンドバックやベルト、時計バンドとして、消費者の方に手に持っていただき、肌に触れながら、使っていただく製品になります。そうなると、見た目の美しさや鮮やかという点だけではなく、当然のことですが、人体にも優しいという点が重要になってきます。

社会生活の面では、環境あるいは、自然に優しいということが世の中でも求められるようになっていますので、肌に触れて害のある薬品が残留しているか否かといったことについては、この十数年、ずっと注意を払ってきました。

天然素材の染料開発でジャパンメイドを提供

鮮やかな色合いで染色されたエコレザーのワニ革 環境に優しいエコレザーという議論があったのは承知していました。当社は、単にワニ革を納めるということだけではなく、当社の革が持つ付加価値も合わせて提供したいと考えておりました。そのために、ホルマリンが問題になれば、何年もかけて薬品のテストを繰り返すといった取り組みをしてきています。

こうした積み重ねがありましたので、日本皮革産業連合会のエコレザーに期待する気持ちは大いにありました。去年の10月に一回目の試験に出したものが、エコレザーの認定をいただきました。

ただ、エコレザーは、通常の革の価格よりも1.5割程度は高くなってしまいます。職人が手がけることのできる量には限界がありますので、通常の工賃との間にどうしてもコスト差が発生します。また、100%天然のなめし剤や染料は、工業製品である染料よりもコストがかかるといった点もあります。

当社では、日本に昔からある伝統的な素材を使った色の染料を使ったエコレザーを提供しています。これは、鞣製剤、染色剤、仕上剤が全て天然素材で、レベルアップさせたエコレザーと言ってもいいかもしれません。

日本的な淡くて柔らかい色が評価される部分もありますが、セールス的には鮮やかな色が圧倒的に好まれる傾向にあります。今は消費者が自分の好みや生き方を強く意識し、自己主張する方が増える傾向にありますので、この柔らかい色を理解する世代が徐々に増えてくると思います。

本来、外国向けに開発したものですが、日本のお客様からも「この色を」というご注文をいただいています。国内では、オリジナティーある製品を提供したいという若手のデザイナーからの問い合わせが多いように思います。ヨーロッパの大きなブランドのメーカーも興味を示してくれたこともありますが、求められる量が大きすぎて、生産が全く追いつきません。

ワニ革に課されたもう一つのエコ視点

現地に赴き、自身の目でワニ皮の質を確認していた頃の写真と。 当社のビジネスは「産地」のコンディションということにも目を向けていかなければなりません。ワニやトカゲの生息地の環境や自然を破壊しないことが重要視されてくるのです。当社が扱う製品は、人に優しい、環境に優しいという2つの視点を追求しなければならないと同時に、原皮となるワニを獲りすぎて生息地が荒れる、あるいは種が減ってしまうということは避けなければいけないわけです。

当社は私の叔父が始めたのですが、子どもの頃からことある毎に言われたのは「商売人はとにかく正直であれ」ということでした。

人間に優しいといった面、生息地を保護し、壊さないという面。その両方があって初めて、環境に優しく、人間にも優しいエコレザーといえると思います。そういう基本スタンスを失ったならば、サプライヤーからもお客様からも徐々に信頼を失って、商売が先細りになると思います。