エコレザー事例

株式会社まみ取締役・新妻正和様 インタビュー

2017年度エコレザー認定数トップを誇る、こだわりのバッグ小売店

名古屋駅の地下街「エスカ」の一角に、色とりどりのバッグが並ぶ店がある。平日にも関わらず、入れ代わり立ち代わりお客様が絶えない人気店。それが、株式会社まみが営む「GARUVA(ガルヴァ)」だ。

2017年度の革とバッグ類合計日本エコレザー(以下「エコレザー」と略)認定数トップを誇る同社の取締役・新妻正和氏に話を聞いた。


エコレザー認定を取得する企業の多くは、タンナーや革の卸売業を営む会社だ。小売店がオリジナル商品の開発のためにここまで革にこだわり、エコレザー認定に導き、これだけの数のバッグ類を揃えるケースは珍しい。それ故に、日本エコレザー基準(JES)ラベルのタグが付いた商品が数多く並ぶ店内は、とても新鮮な光景であった。
初めてエコレザーの認定を取得したのは、2017年1月15日。それから1年で、ここまでの数のバッグ類にJESラベルのタグが付けられるようになったという。

エコレザーについて説明した手作りのポップ

「当社では創業当時から天然染料を使うことで、バッグとしての役割が終わった後でも土に還るほど環境に優しく仕上げた、"土に還る革"をお客様の元へお届けできるように励んでいます。創業は1968年。それから約50年間、この思いは変わっていません。だから、エコレザーの話を最初に聞いたときはとても興味を持ちました。
ただ、取得するための検査費用も安くはありませんし、タンナーの方にご協力いただくのも簡単なことではありません。一度は取得を諦めた時期もありましたが、『ここまで革にこだわる鞄販売店は珍しい!是非エコレザーの取得に挑戦してほしい!』という日本皮革技術協会の方の篤いご支援もあり、無事にエコレザー認定を取得することができました。また、実際に認定を受けることで、当社の商品の良さを、私自身も改めて感じることができました」(新妻氏)
エコレザーの基準を満たすのは、簡単なことではない。皮を鞣したり、染めたりする作業を自社で行っていない小売店ならばなおさらだ。認定基準をクリアするためには、革の製造を担当するタンナーの方の理解と協力が欠かせない。
「認定取得までの大変な試験にご協力いただいたタンナーの方には、本当に感謝しています」と語る新妻氏の表情は、その苦労と感謝、達成感に溢れていた。

紙のように軽い、シンプルで飽きの来ないオリジナルバッグ

店内に並ぶカラフルなバッグは、どれも個性的なデザインだ。他店のバッグにあるはずの金具がなかったり、ひとつのバックで3種類、4種類と様々な使い方ができたりと、色以外にもたくさんのこだわりがあることが容易に想像できる。
中でも目を引くのは、「紙のように軽い!」と書かれたバッグだ。ポニー(子馬)の革を使って作られたというバッグは、重さをほとんど感じないほど軽い。手触りも滑らかで、肌馴染みも良い。紙のようなシワの入った独特な風合いのものもあれば、滑らかで均一的な印象のものもあり、バリエーションが多いのも特徴だ。

紙のように軽いシリーズは、ぜひ一度持っていただきたいバッグです

「このシリーズでは、つなぎの金具やジッパーなどをなるべく使わないようにしました。革には、捨てる場所がありません。細かな部分も革で作り上げることで、合成素材とは違う、天然素材ならではの風合いや雰囲気を大切にしたシリーズです。 オリジナルバッグはすべて、お客様に長くご愛用いただくことを想定して作っています。トレンドに左右されていない商品が多いのは、そのためです。またご購入の前には、"土に還る革"という当社のコンセプトをしっかりと説明しています。天然素材だから見られる傷や、使い込んでいくうちに変わっていく風合いを楽しんでいただくことが、バッグを長くご愛用いただくための重要なポイントです。
実際に、『数年前にGARUVAでバッグを買って...』『色違いのバッグがほしくて...』といったリピーターのお客様が多いのが、当社の特徴でもあります」(新妻氏)

昨年末には、エコレザー認定記念としてL字型ウォレットも販売したという。金具が少ないシンプルなデザインの財布は、男女問わず支持を得ているそうだ。さらに、店頭で働くスタッフがお客様のニーズを形にするために企画したバッグなど、オリジナリティに溢れた商品もある。
素材そのものにこだわるのはもちろん、それをどう生かした商品を作るのか、その良さをどう伝えるのかが、同社の商品が長く愛される理由だろう。

海外にも広がる、エコレザー認定の反響

近年は、海外からのお客様も多いというGARUVA。よく見かけるのは台湾や香港のお客様で、土日は店内が海外の方でにぎわっているという。こうしたお客様への接客中も、JESラベルの効果を感じると、新妻氏は話す。

取締役・新妻正和氏

「海外の人にも、"エコ"は響いていると思います。『このラベルは何ですか?』といった質問を受けることが多く、話をするきっかけになっています。きっかけができると、当社のバッグの良さもきちんと伝えられるので、有難いですね。
これは、エコレザー認定を取得して良かったことの一つです」(新妻氏)

エコレザー認定を取得しても、それが必ずしも利益につながるわけではない。取得後のお客様へのアプローチが重要になってくる。店内に置かれたポップやパンフレット、バッグ類に付けられたタグは、国内外問わず多くのお客様にエコレザーの価値や大切さを伝えようとする新妻氏の強い思いの現れだ。
「エコレザーのパンフレット、また追加でいただいてもいいですか?」と笑顔を見せた。